MAP法・HAP法
MAP法とHAP法は、廃水中のリンを回収・除去するための化学的沈殿法で、それぞれ異なる化合物としてリンを回収します。
MAP法はマグネシウム・アンモニウム・リン酸塩(ストルバイト)としてリンを回収し、HAP法はハイドロキシアパタイト(HAP)としてリンを回収します。
これらの方法は、資源循環や水質改善に貢献し、農業用肥料や工業原料としてのリンの再利用を可能にします。
MAP法とは
MAP法は、マグネシウムイオン(Mg²⁺)、アンモニウムイオン(NH₄⁺)、リン酸イオン(PO₄³⁻)を反応させて、マグネシウム・アンモニウム・リン酸塩(MgNH₄PO₄·6H₂O)を沈殿させる方法です。この沈殿物はストルバイトと呼ばれ、肥料として再利用できます。
MAP法の原理
基本的な反応式は以下の通りです:
Mg²⁺ + NH₄⁺ + PO₄³⁻ + 6H₂O → MgNH₄PO₄·6H₂O↓
この反応は、pH 8.0〜9.5の範囲で効率的に進行します。マグネシウム源としては塩化マグネシウムや硫酸マグネシウムが使用されます。
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MAP法の特徴と利点
- リンと同時にアンモニア態窒素も除去できる。
- 生成物のストルバイトは、リン・窒素・マグネシウムを含むため、肥料として高い価値があります。
- スケール障害の防止にも役立つ。
MAP法の適用例
下水処理場の汚泥消化液や畜産廃水など、高濃度のリンとアンモニアを含む廃水の処理に適用されています。
HAP法とは
HAP法は、カルシウムイオン(Ca²⁺)とリン酸イオン(PO₄³⁻)を反応させて、ハイドロキシアパタイト(Ca₅(PO₄)₃OH)を沈殿させる方法です。HAPは骨や歯の主成分であり、工業材料や肥料として利用できます。
HAP法の原理
基本的な反応式は以下の通りです:
5Ca²⁺ + 3PO₄³⁻ + OH⁻ → Ca₅(PO₄)₃OH↓
この反応は、pH 9〜10のアルカリ性条件下で進行します。カルシウム源としては水酸化カルシウム(消石灰)や塩化カルシウムが使用されます。
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HAP法の特徴と利点
- リンのみを選択的に除去できる。
- 生成物のHAPは工業原料や土壌改良剤として利用可能。
- カルシウム源が安価で入手しやすい。
HAP法の適用例
食品工業廃水や下水処理水など、リン濃度が比較的低い廃水の処理に適しています。
MAP法とHAP法の比較
両方法の主な違いと特徴は以下の通りです:
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生成物
- MAP法:ストルバイト(MgNH₄PO₄·6H₂O)
- HAP法:ハイドロキシアパタイト(Ca₅(PO₄)₃OH) 必要なイオン
- MAP法:Mg²⁺、NH₄⁺、PO₄³⁻
- HAP法:Ca²⁺、PO₄³⁻ 最適pH
- MAP法:8.0〜9.5
- HAP法:9.0〜10.0 除去対象
- MAP法:リンとアンモニア態窒素
- HAP法:リン 生成物の利用
- MAP法:肥料(リン・窒素・マグネシウム源)
- HAP法:工業原料、土壌改良剤 適用対象の廃水
- MAP法:高濃度のリン・アンモニアを含む廃水
- HAP法:リン濃度が低〜中程度の廃水
適用上の注意点と課題
これらの方法を適用する際には、以下の課題に注意が必要です。
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MAP法の課題
- マグネシウム源のコストが高い場合がある。
- アンモニア濃度が低いと反応効率が低下する。
- ストルバイトの過剰沈殿によるスケール障害のリスク。
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HAP法の課題
- 生成物の結晶が微細で、固液分離が難しい場合がある。
- 高pH条件が必要で、アルカリ剤の添加量が多くなる。
- カルシウムと他の陰イオン(炭酸イオンなど)との副反応による効率低下。
まとめ
MAP法とHAP法は、廃水中のリンを資源として回収し、環境負荷の低減と資源循環を同時に実現する有効な技術です。廃水の特性や処理目的に応じて、適切な方法を選択し、効果的な処理を行うことが重要です。これらの技術の活用により、持続可能な水処理システムの構築に貢献できます。